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第19回
食うべきか 食わざるべきか それが薬草・毒草だ
2.アサガオ
 アサガオの栽培についてはこれまで二件の質問が寄せられた。一件は小学生からのもので夏休みの宿題がらみ。もう一件は成人女性で鉢で上手に美しく咲かせる方法についてである。 ところがアサガオの観察は本格的に行うとなると夜中の2時からスタートしなくてはならず、また美しく咲かせるにはオーソドックスな「アンドン仕立て」から「千輪咲き」まで その栽培技法は江戸時代にまで遡る必要があるため(現在の方が江戸時代よりアサガオ栽培技術は退化してしまっている)、ともに質問者にご満足していただける答えとはなりえなかった。 いつの日か日本の誇るアサガオについて、楽しい話しを書いてみるつもりなので、それまでアサガオファンの皆さん、どうかお持ちになっていていただきたい。

 さてこのアサガオは、花と葉は無害のようであるが(絶対とはいえません)、その種子は有名なる「瀉下剤」である。一説にはアサガオの種子の「粉末」を大人で1グラム、最大1.5グラム水とともに飲み下すと、ほどなく下の方では順調なお下りが始まるとある。 ここまではよい。ところが古い本も最近出版された二冊の本も、筆者はすべて違うというのに、アサガオの種子の危険性については全く同じ表現を「孫引き」してある。つまり「よく幼児や子供が誤って種子を飲むことがあるが、すぐにのどに指を入れて吐かせるとよい。 その場合あらかじめ水などを飲ませておくと吐きやすい。1〜2粒なら腹痛と下痢をする程度である」とか、「1〜2粒程度であれば腹痛と下痢をする程度である。それほど慌てることはない。しかし、それ以上になると病院に行かなくてはならなくなる…」とある。 本当だろうか?そこでもう二十年以上前に、私はアサガオの種子を4粒飲み込んでみた。子供で1〜2粒なら大人の自分は4粒は飲まなくてはなるまいと思い、4粒にしたのである。そして1時間たっても、半日たっても、私は腹痛にも下痢にも襲われなかった。 さらに本年、今月今夜の今朝のこと、私はこの原稿を書き始めた時に、念のために再度庭のアサガオの種子を4粒飲み込んだ。40才の時の肉体と現在とでは、毒への耐性が異なっていないかを確認する意味も込めて。

 幸いというか、つまらないというか、やはり何時間たっても私は平気だった。ということは今までの筆者は、昔のある人が書いたことを、そのまま確かめもせずに借用、転用していただけなのだ。 ここは是非とも「ファルビチン(アサガオの種子に含まれる毒性となる樹脂配糖体)は致死的な毒ではないが、作用の激しい成分である。身近な植物だけに取り扱いには注意が必要となってくる」と述べている筆者に、この私のツラと、胃袋と大腸・小腸を見せてやりたいものである。 アサガオの粉末を度を越して飲めばそりゃえらいことになるだろうが、アサガオの種子を間違って飲んじゃったとしても、アサガオの種子は誰もが知っているようにベラボーに固いのである。固すぎて種子を蒔く時は、種子にヤスリで傷をつけて、その上水で一晩種子を浸してから蒔く位である。 人間の胃液は強烈な酸性だそうだが、アサガオの種子2〜3粒で腹痛が起きるという意見にはやはり賛成できない。しかしこれはあくまで私一人だけの生体実験であるので、決してわざわざアサガオの種子を飲まないようきつくご注意申し上げる。ついでに若葉一枚とツルの先を噛んで、味わい飲み下したが、やはり変調は認められなかった。 そしてこちらの方もうまいから一度食ってみろとは言わない。ちょっと苦味があって食えないものではないが、わざわざ食うべきものでもない。また大量に食ったらどうなるかは実験したことないし、これからもする気はないので、どうしても気になる人はご自分で結果を導き出していただきたい。

 結論:「幼児や子供が誤って食べてしまい中毒を起こしたというケースは数多く報告されている」と書かれている本がある以上、注意するに越したことはない。だけど本当に中毒を起こした子がいるのだろうか。 いるとしたらその子は恐ろしく丈夫な歯を持っていて、その歯でアサガオの種子をガシガシと噛みくだいて飲み込んでしまったとしか考えられない。でもそんな凄い子なら、アサガオの種子なんかは「屁」の足しにもならないのではないだろうか。 しかし決してわざわざ食うべきものではないことだけは確かである。

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