これは前に「ススキ」のことを調べた時に、「おお、これはいつか機会があったら絶対皆様にお知らせしよう」とまとめておいた、花情報の一つです。題して「茶花として長期間使われる植物は何か」というやつです。
●ススキ
まずススキですが、これは5月から7月までの3ヶ月間を「葉もの」として茶席で使用されます。さらに次の8、9、10月の3ヶ月間は、「花もの」というのか、「穂もの」というべきか、例の尾花が出現した状態で使用されます。つまり人の目につく派手な花を一切咲かせることのないイネ科植物群にあって、このススキ(とカルカヤ)のみが、茶人には6ヶ月もの長きに渡って、結構毛だらけ風流すきだらけと観賞され続けるのです。
●椿
さてこの6ヶ月間のススキを凌ぐ茶花は、さすがにあるまいと思われるでしょうが、実は一種だけあるのです。それは「椿」です。自生地を本州北端の津軽海峡冬景色まで頑張り、日本海側の大雪には押しつぶされても踏みつけられても耐え忍ぶ、あのヤブツバキやユキツバキです。あるいは九州は園芸種の椿が古くから次々に作出されてきている土地柄ですので、南国の茶人はほかのもっと豊艶にしてなんともいえない「通」ツバキを、twoとは活けずに一輪だけ、利休ごのみの竹筒に挿して、一服盛ったり盛られたりしているのかも知れません。
この草本なら百合、木本なら椿といってもよい日本を代表する花木の一つの椿たちは、なんと10月から始まって、師走を忙しく追い越すや新年1月から春の4月まで、な、なんと7ヶ月もの長期に渡って床の間に利用されていくのです。ここまで長く使われる植物は、まずは他にはないでしょう。何やらやたら椿はおめでたい植物に思えてきました。
●ネコヤナギ
話しを続けますと、この椿につぐ長距離ランナーをあげると、それはネコヤナギです。茶人は花をまず開花最初期のものを「走り」としていち早く床の間に飾りますが、このネコヤナギは早くも12月には走りとして茶席に用いられ、それ以降の1月から4月までは「盛り」として都合5ヶ月ほど茶花として利用されます。
●「利用花期」の3〜4ヶ月と長いもの色々
さらに「利用花期」の3〜4ヶ月と長いものとしては、ウメ、スイセン、カンギク、カンボタン、マンサク、ミツマタ、ロウバイなどと色々ありますが、「走り」が新年1月、つまり正月になってめでたく新鮮に初々しく飾られるのが、「イヨミズキ、トサミズキ、コブシ、フクジュソウ、ボケ、モクレン、ヤナギ、レンギョウ」です。中には正月前から活けられることもあるでしょうが、これらは1月が走りとなっております。
フクジュソウなどは「元日草」とも「元旦草」ともいわれるので、12月中に床を飾っては興ざめもいいところです。また上述のモクレンなんかは、まだまだ花は先なのに何で1月に活けるのよ、と思われる方。これはモクレンの白銀の蕾を賞するのでありまして、決して強制的に花を咲かせてからってんではありません。そう言えばこのモクレンが、見方によっては薄汚く覆っている外皮を、蕾という蕾がいっせいにハラリハラリと地上に落下させるのは、なぜか寒さがいよいよ厳しくなりまさっていくという12月に入った頃です。
私としては一番寒い1月から2月いっぱいが過ぎてから外皮を落とせばいいのにと思うのですが、なぜかモクレンはその前に、サビ色をした外套を利根の河原で大出入りをやらかすヤクザレンのように、二ツ折りにして(この辺の礼儀正しさはヤクザレンとは違って)落とすのです。
●ネコヤナギの蕾
モクレンのハラリハラリで思いつきました。ネコヤナギの蕾も生け花として使う時は、これは開花直前まで自分でハラリをしませんので、活ける人がすべてではなく半分位を外側の皮を剥いでやってから使用すると、渋い赤いつやと白銀のつやとが思わぬコントラストを演じることになります。そして最後の最後はこの枝を挿し木しますと、1月、2月は条件付きですが、暖かい時ならかなりの確率でやがて発根に成功しますので、以後ネコヤナギの人生は根なし草から鉢の木生活へとリクルートすることになります。しかもこれは安っぽいリサイクルではありません。枯木となってゴミ箱に捨てられる所が、なんとも瑞々しい新緑を展げる新生命の誕生となるのです。
新年早々、新生命誕生のめでたい所に話しが落ちつきましたので、今回のなるほど情報はこれにて閉じさせていただきます。
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